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2019年の統一地方選挙に向けて

いよいよ2019年4月の統一地方選挙の日程が決ましたね。
今上天皇陛下の御退位という国家の節目とほぼ同じ時期であり、平成最後の統一地方選挙となります。
新しい時代の地方政治の在り方が問われる選挙になるでしょう。

選挙まであと半年、立候補を検討している方々はもう選挙準備に入っている頃ではないでしょうか。
みなさん、政策の立案や選挙活動の方針の決定、各種の印刷物や用品の発注などなど、準備に忙しくなりますね。

時間もお金も限られた中、どのように効率的に得票に繋げて行くかが勝負の分かれ目です。
現職の方であっても、前回と同じ戦術や戦略で大丈夫なのか不安な方も多いでしょう。
初出馬の方はなおさら不安が募るかも知れません。

今回の統一地方選挙は、2016年6月に施行された、選挙権の18歳以上への引き下げ後、初めての選挙となります。
若年層の投票が全体にどのような影響を与えるのかは未知数です。

今回は地方議会選挙の現状とその問題点を考えると共に、変化しつつある地方議会選挙についても触れて行きます。
現状を分析することは、選挙戦略の立案に役立ちますので、ぜひご一読ください。

1●地方議会選挙の現状と問題点

[1-1]下がり続ける投票率

統一地方選挙における投票率は、1951年(昭和26年)の選挙をピークに下降の一途を辿っています。
これは都道府県議会選挙だけではなく、市区町村議会選挙も同様です。
ピークの1951年には90%を超えていた投票率が、2015年(平成27年)には50%を切っているのです。*1
これらの要因としては、市民の政治離れや選挙の無風化がありますが、政党離れや無党派層の増加も挙げられるでしょう。
無党派層は必ずしも政治的関心が低いわけではなく、支持する候補者がいないために棄権を選択しているのです。

候補者の掲げる政策と市民の期待する政策が一致していないと考えるのが普通ですが、都市部の選挙の場合は候補者が多過ぎるため、政策が十分に伝わっていないことも考えられます。

*1 総務省「地方選挙結果調」より

[1-2]割に合わない地方議員

地方議会選挙で昨今よく言われているのは「地方議員は割に合わない」ということ。
無投票当選が過去最高となった前回の統一地方選挙から浮き彫りになるのは、地方議員のなり手不足の問題です。

どうして地方議員のなり手が不足するのかと言うと、高齢化問題や都市部への人口流出による人材不足、選挙への関心の低下などが理由です。

そして何よりも人口減となる自治体が多い中で、その活力や税収が低下し、相対的に議員の役割が変化し、昔のような「先生」然とは出来なくなったことも大きいでしょう。

人口減によって行政サービスは効率化を図らざるを得なくなり、地域住民への負担増となることもしばしば。
そんな中、議員は矢面に立って住民からの怨嗟の声を受けなければなりません。
「割に合わない」とも思うでしょう。

[1-3]個人戦になりがちな都市部の選挙戦

一方で都市部では、一つの選挙区に多くの定数が設定されます。
こうなると候補者の数もぐっと多くなり、有権者にとっては候補者のことを知るだけでも多くの労力が必要です。

こうした選挙区では低い得票率でも当選することが出来ますが、票の移譲が認められないため、同じ政党の中でも争うことになります。
政策での差別化が難しく、個人本位の選挙戦になることが多いのです。

認知度向上や、個別政策についての周知を考えると、労働組合や特定の業界・企業の支援を受ける方が有利でしょう。
個人で戦おうと考えると、どうしても「金のかかる」選挙戦になってしまいます。

その上で昔のような「旨味」の減った地方議員は、やはり割に合わないと言えるかも知れません。

[1-4]男性がほとんどを占める地方議会

地方議会の問題点としては男女比率の問題も挙げられます。
多くの都道府県議会、市町村議会では、依然として男性がほとんどを占めているのが現状です。

都道府県議会の男性議員の比率は、全国平均でも91.2%、一番高い石川県や佐賀県では97.6%に昇ります。
一番男性比率が低い東京都でも、80.3%と八割を超えています。*2
女性の方が平均寿命が高いこともあり、有権者数は女性の方がやや多いにも関わらず、議員は男性が圧倒的に多いため、女性の声が届きにくい社会と言えます。
もちろんこれは女性の地方議員のなり手不足に起因している点も大きいでしょう。

東京都では小池百合子氏が初の女性都知事となるなど、女性の地方政治への参加も増加傾向にあるとは言えるでしょうが、議会ではまだまだ進んでいないのが現状でしょう。

*2 総務省「地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調(平成25年12月31日現在)」より

[1-5]高齢者に偏った投票率

地方議会選挙の投票率は低いことも問題ですが、その年代別の構成についても問題が見られます。
言うまでもなく、投票率は二十代、三十代が低く、六十代や七十代以上が高いのです。

2017年に行われた東京都議会選挙を例に見ると、二十代は約26%、三十代が約38%であるのに比べて、60代が約67%、70代以上で約65%となっています。*3
高齢化社会と言われて久しい中、投票率においてもこれだけの差があると、どうしても選挙で掲げる政策の中心は高齢者向けということになりかねません。
そうなるとますます若年層の選挙離れを助長することとなり悪循環となってしまいます。

本当に「地方創生」を目指すのであれば、将来の地方の在り方を争点とした選挙戦としなければ、若年層の関心を取り戻すことは難しいのではないでしょうか。

*3 東京都選挙管理委員会「年代別推定投票率(統一地方選挙(議員選挙))」より

2●変わりつつある選挙戦

[2-1]制度面での変化

冒頭でも述べた通り、2016年6月からは18歳・19歳の人々にも選挙権が与えられ、有権者の数は前回の統一地方選から増えました。
十代の投票率は二十代などと比べて高い傾向にありますので、選挙への影響は出て来るでしょう。

また平成27年3月に施行された公職選挙法改正によって、都道府県議会の選挙区は条例で定めることや、一定の要件下で市町村を単位として設定すること、指定都市では行政区以外の区域で分割して設定することが出来るようになっています。

投票数の拡大と選挙区の区割りの変化で、前回の統一地方選挙と同じ戦略では難しい選挙区も出て来るかも知れませんね。

[2-2]インターネットを利用した選挙運動

インターネットを利用した選挙運動、いわゆるネット選挙に関してはご存知の通り2013年4月の公職選挙法改正で解禁されました。
しかしながらインターネットを用いた選挙活動は現在の日本では限定的と言えます。

何が良くて何が駄目なのか、非常にややこしい規制がありますので、なかなか利用も進まないのが現状でしょう。
またインターネットは主体的に情報を取りに行かなければならないため、そもそも選挙に対する関心を高める必要もあります。

選挙先進国のアメリカやイギリスでは、選挙にインターネットを利用することに関しては費用面以外での規制は少ないため、積極的に活用されています。

今回の統一地方選挙は、ネット選挙解禁から二回目の選挙です。
まだまだ十分とは言えないインターネットのさらなる活用が求められているのではないでしょうか。

[2-3]選挙専門家の登場

選挙コンサルタントや選挙プランナーという人をご存知でしょうか。
アメリカ大統領選挙などではよく話題になる、選挙に関する専門家で、日本でも少しずつ知名度を上げて来ています。

具体的にどんな人なのかと言うと、選挙に際しての政策立案やイメージ戦略、情勢分析を専門としており、さらに各種の人員手配や印刷物の製作を請負ってる場合もあるなど、選挙に出馬する人にとっては非常に頼もしい存在です。

これまで述べて来た前回選挙戦からの変化や、インターネット時代の選挙戦などについても豊富な知見を持っていますので、これからの時代にますます活躍する機会が増えるものと思われます。

3●日米の地方議会を比較する

[3-1]議員の数での比較

アメリカの地方議会である市議会は、日本にくらべると議員の数の少なさが目を引きます。
人口350万人のロサンゼルス市でも議員はたったの15人。
人口72万人のサンフランシスコ市で11人です。

単純比較は出来ませんが、ロサンゼルス市と同規模の人口370万人の神奈川県横浜市議会は議員定数86人、サンフランシスコ市と同じ約72万人の東京都練馬区の議員定数50人ですから、6分の1から5分の1程度の規模感です。

議員数がそんなに少なくて、市民の意見は届くのかが心配になりますが、アメリカの市議会では市民の政治参加が盛んで、議会で市民が発言することも出来ます。
市によっては外国人や子供でも発言出来るのです。

また市議会のもとには市民がボランティア参加する各種の委員会が設置され、テーマに沿った議論が行われます。
この議論を踏まえて議案がかけられるため、市民の意見に直結した議会となっています。

広い国土を持ち、連邦制で州ごとに政府があるアメリカの市議会ですので、都道府県の下にある日本の市町村議会とは横並びで比較するのはフェアではありません。
ですが市民はとかく単純比較して日本の議員数の多さを批判するものです。

日本の地方自治も、市民の政治参加への意欲が高まれば変わって行くかも知れません。
そのためにも、政治や選挙が身近に感じられるようにして行かなければならないでしょう。

[3-2]議員の報酬での比較

日本の大多数の議員は、議員を本業として生計を立てていますが、アメリカの市議会議員は報酬が少ないボランティアに近く、本業は別に持ってる場合がほとんどです。

議会も昼間ではなく夜に行われるなど、制度として兼業を前提としているので、それでも成り立っている部分は大きいでしょう。
単純に報酬の多寡を比べてもあまり意味はありません。

江戸時代の田沼政治が再評価されている昨今、清貧だけを貴しとしてもいられませんが、議員の在り方、選挙の在り方、そして地方自治の在り方まで含めて議論し、その上で身を切る部分は切っていかなければならないでしょう。

欧米諸国に比べて日本の議員報酬は高いと言われています。
地方政治の担い手不足の問題も含めて検討して行かなければなりませんね。

4●今後の選挙制度の在り方とは?

投票率の低下と地方議員のなり手の減少は国でも問題点として認識されていて、総務省が2016年から2017年にかけて開催した「地方議会・議員に関する研究会」に於いても議論されています。

同会の報告書では、住民がしっかりと選択ができ、結果に納得出来る選挙とすることが、住民の関心を呼び起こし、地方議会の存在感を高めることに繋がるとしています。

それ以外にも、政策・政党本位ではなく個人本位になりがちな選挙制度や、都市部で候補者に関する情報が多過ぎて選択が難しい点、同一都道府県内での一票の格差などが問題点として挙げられており、今後の選挙制度改革の方向性が見えると言っていいでしょう。

また報告書では、選挙制度自体を民意によって決定する「選挙制度選択制」についても言及しており、もしも導入されれば自治体ごとに選挙制度が異なって来ることになります。

有権者の情報コストの軽減と投票環境の整備と言った観点からは、今後のインターネットを利用した選挙活動の拡充、さらにはインターネットでの投票も見据えていることがうかがわれます。
これまで以上に情報発信力が問われるのではないでしょうか。

この研究会はあくまでも学術的な観点から現状を分析して解決策を提案していますので、実際に制度として導入されるかはまだ分かりませんが、総務省としてこのような方向性を検討しているのは間違いないでしょう。

地方議員を取り巻く環境や、地方議会選挙の現状と課題、さまざまな変化についてお話しして来ました。
今後の選挙制度の在り方については、まだまだ議論が必要な部分も大きいと思います。

地方議会の選挙制度を変えることは、地方自治の在り方だけでなく政治的にも大きな影響の出る問題です。
民主主義国家としての日本の今後を考えて行く上でも、地方議会の議員や関係者だけでなく、広く国民を挙げての議論が必要となるでしょう。

しかし変化は着実にやって来ています。
これまでの選挙活動と同じことをしていては、この先も勝ち残って行けるかどうかは分かりません。
政策のブラッシュアップや、より市民にわかりやすい情報発信などが求められます。

もう間近に迫った選挙戦、準備は整っていますか?

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