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選挙運動を行う上で避けて通れないのは公職選挙法。ではその公職選挙法の中で選挙事務所での食事ができないとされていることはご存知ですか? もちろんどんな場合でも食べてはならないわけではありません。
しかし飲食物を提供するためには細かいルールがあるのです。そのルールは公職選挙法の第139条に書かれています。まずは条文を見てみましょう。
(飲食物の提供の禁止)
第一三九条 何人も、選挙運動に関し、いかなる名義をもつてするを問わず、飲食物(湯茶及びこれに伴い通常用いられる程度の菓子を除く。)を提供することができない。ただし、衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙において、選挙運動(衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党が行うもの及び参議院比例代表選出議員の選挙において参議院名簿届出政党等が行うものを除く。以下この条において同じ。)に従事する者及び選挙運動のために使用する労務者に対し、公職の候補者一人について、当該選挙の選挙運動の期間中、政令で定める弁当料の額の範囲内で、かつ、両者を通じて十五人分(四十五食分)(第百三十一条第一項(選挙事務所の数)の規定により公職の候補者又はその推薦届出名が設置することができる選挙事務所の数が一を超える場合においては、その一を増すごとにこれに六人分(十八食分)を加えたもの)に、当該選挙につき選挙の期日の公示又は告示のあつた日からその選挙の期日の前日までの期間の日数を乗じて得た数分を超えない範囲内で、選挙事務所において食事するために提供する弁当(選挙運動に従事する者及び選挙運動のために使用する労務者が携行するために提供された弁当を含む。)については、この限りでない。
ー公職選挙法より引用
いきなり法律の条文を出されても、法律関係に慣れていない方からすると何が書かれているのか理解するのが大変かと思います。簡単に言うと次のようになります。
基本的に選挙運動する人に飲食物を出すことは禁止です。でもお茶とか軽いお茶受けのお菓子ぐらいならいいですよ。
また衆議院比例代表選以外では選挙運動期間中、選挙運動員と労務者に対して決められた金額の範囲内であれば、15人分まで1日三食のお弁当出しても良いですよ。
…ということです。選挙事務所の数が増えた場合は追加で6人分増やせることも決められています。なお金額については1人一食1000円以内、1日当たりの金額が3000円以内です。(公職選挙法施行令 第129条より)
1000円までのお弁当というとかなり高価なもののイメージがありますが、実際は経費の問題もありますのでそこまで良いものを食べられるわけではないでしょう。でも食事はやっぱり厳しい選挙戦の中での数少ない楽しみですから、美味しいものがいいですよね。
なお、選挙事務所に調理設備を作って食事は炊き出しにしようかと考えることもあるかも知れませんが、この場合は食事を提供した数や金額が曖昧になりがちです。トラブルのもとになってしまう可能性が大きいので、あまりオススメはしません。
もう一つ気になるのは、お茶とか軽いお茶受けのお菓子の部分。お茶や軽いお菓子であれば出しても良いということなのですが、ではコーヒーはどうでしょう? 軽いお菓子はどの程度のもの? 文章からだけでは分かりませんよね。
まずお茶ではなくコーヒーを提供することは、昔はダメでしたが今は大丈夫です。お菓子については、おせんべいやおまんじゅうはOKですが、ケーキや羊羹はダメです。
この辺りの線引きは非常に難しいのですが、高級そうなイメージのあるものはダメだそうです。実際の値段の差は現代ではそれほど大きなものではないと思いますが、昔の価値観をそのまま引き継いでいる部分はあるかも知れません。
特に最近はお菓子も多様化して金額もリーズナブルなものが多くなっています。100円ケーキなんてものもありますが、でもケーキはNGなんです。…難しいですね。もちろん、おせんべいの代わりにサンドイッチなんてのもいけません。サンドイッチは軽食になってしまいますので、お菓子には入りません。
お菓子は300円まで…なんてのは冗談ですが、何がお菓子で何が高級菓子なのかは慎重に考えた方が良さそうですね。こうした細かいことも選挙プランナーに相談してみると答えてくれますよ。
お弁当の金額ですが、選挙運動にかかる費用を計算するためだけではなく、それ以外の面でも重要な意味があるのです。選挙運動員や労務者の方々にお弁当を提供した場合には、その報酬や実費弁償額から差し引かなければならないのです。
選挙運動員が朝・昼に800円のお弁当を食べ、夕ご飯は自費で1600円の定食を食べました。この場合に実費弁償として支払える金額は、1日当たりの3000円から朝・昼のお弁当代の合計1600円を引いて、1400円まで…と言いそうになりますが、一食当たりの限度額が1000円ですので、支給できるのは1000円までとなります。
労務者の場合は弁当代の実費弁償はありません。例えば昼に800円のお弁当を食べた場合、1日の報酬が10000円だとすると、実際に支払える報酬は9200円となります。
誰がどのお弁当を食べたのかきちんと管理していないと、あとで困ってしまいます。たかが弁当などと思わないようにしてくださいね。お弁当が一個余ってたから、二つ目食べて良いですか?と聞かれたら、ちゃんと断わってください。
さてそんな重要な選挙と食事の問題。実際に大変なことになってしまった実例があるのです。それは山梨県にある小菅村という村で2007年に起こったお話。
2007年1月、山梨県知事選が行われ、現職知事と新人候補が争いました。この県知事選で小菅村の村議会議員10人は、全員が現職知事を応援していたそうです。
村議会議長を含む議員3人は、村議会議員5人を含む村民にファミリーレストランで食事をおごって投票依頼をしました。1人当たり2000円相当の食事でした。
これはもうお弁当代がどうのとか、金額がどうこうと言ったお話ではなく、立派な買収行為ですよね。もちろんアウトです。この事実は2月に発覚して、村議会議員10人のうち8人が書類送検される異常事態となったのです。
さらにお話は続きます。小菅村の村長は議会が開催できなくなることを心配して前倒しで議会を招集したのですが、その初日に書類送検されていない2人を含む村議会議員10人全員が辞職してしまったのです。
議員10人全員が現職知事を応援していたため、連帯責任ということだそうです。これによって、小菅村議会は議員が1人もいないという更なる異常事態となり、次の選挙が行われるまでの約二ヶ月間これが続きました。
これはかなり特殊な事例かも知れません。でも選挙の際の食事は非常に神経を使うことだということを忘れないでください。
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公職選挙法は厳しい法律です。しかしそこで決められていることは、条文を読んだだけでは分からないことが多いですよね。この辺りは慣例や通例を知ることが重要になって来ます。
あれはOK、これはNG。あなたはきちんと選挙運動員や労務者のみなさんに説明することができますか?